(書き出しにさんざ迷った挙げ句の苦し紛れのマクラなのでスルーしてください)
それは今を遡ること二ヶ月前。
正月休みの真っ直中の夜更け、ネット渉猟やtwitterにも飽いた頃、何の気なしにザッピングしていたら印象的なメロディが流れてきた。
画面には現代ロンドンの風景。
そしてその鉛色の空に浮かび上がる、スレート色の"SHERLOCK"の文字。
ああこれ知ってる。現代版ホームズドラマだ。
私は幼少の砌よりホームズ譚を愛好してきた。
古くは子供向け本から長じてからは創元推理文庫版まで、飽きもせず幾度となく繰り返し読んできたものである。
また、80年代半ばから90年代にかけて、NHKで夕方に放映されていたグラナダ(イギリスのTV局)制作の「シャーロック・ホームズの冒険」もよく見ていた。
このシリーズに出てくるホームズ役の俳優、ジェレミー・ブレットはストランド・マガジン(作品が掲載されていた雑誌)の挿絵の現し身の如く実に優雅で、おお話に読むヴィクトリア時代のジェントルマンとはかくなるものであったか、と東洋の小娘をうっとりさせたものであった。
そのうち、所謂「正典」(シャーロッキアンはコナン・ドイルの手によるオリジナル作品をこう呼ぶ)だけでは物足らなくなり、パスティーシュ、つまり二次創作にも手を出した。
しかし最初の数頁、アプローチをかけてきた女性(の下僕)をやりすごすため、(フェイクとはいえ)ホームズがワトソンとの同性愛関係をほのめかす、との展開にあほかぼけと叫び(叫んでません)本を放り投げ(投げてません)そのままうっちゃらかしたということがあった。
因みにこの作品、ビリー・ワイルダー監督のホームズ映画のノベライズだったのだが、映画自体も愛すべきしょーもないB級映画という評判である、らしい。
(そらそうだ。最後にはネス湖のネッシーが出てくるそうだし)
原作に心酔しきっていた小娘は、まだその「しょーもなさ」を達観して嗤えるには至っていなかった。
正直、この作品に関しては今だに達観できるかどうか自信がないが。
とまれ、かくなる苦い(?)経験を経た私はホームズものは絶対正典、及び正典を忠実に再現した映像作品しか見ないぞ、と心に誓っていたのであった。
ましてや21世紀のロンドンで活躍するホームズだあ?
んなもん見たら(自称)シャーロッキアンの沽券に関わるわ。
と一顧だにしてこなかったのである。
だかしかし。
この日は兎に角退屈していたし、何より先日観たばかりの映画「ホビット」の主人公、ビルボ役のマーティン・フリーマンがワトソン役で出演しているということを知ったので、ほほうそれではビルボ君のワトソンぶりをちょっと覗いてみるかなという位の軽い気持ちで観ることにしたのである。
結果。
どん嵌まりました。
どれだけ嵌まったかって、放送終了後に間髪入れずAmazonでDVDBOXを注文した位である。
私が観たのはシーズン2のしかも最終回、「Reichenbach fall」(日本版では「ライヘンバッハ・ヒーロー」であった。何故にヒーロー?)という、初めて観るには最悪に近い回だったのだが、それでも終始魅入られたように微動だにできなかった。
推理の英雄から一転、宿命のライヴァル、モリアーティに追い詰められていくシャーロック。
シャーロックを執拗に付け狙う狂気のモリアーティ。
(またこのモリアーティ役の人の演技が凄まじいんだわ)
彼等に振り回されて途方に暮れつつシャーロックを信じ続けるジョン。
そしてfall、そしてエンディング。
勿論ライヘンバッハなんだから分かっちゃいるんだけど、ぐおおおおそこで終わりかよおおおおと奇声を発しつつのたうち回る(喩えです)ほどの衝撃を受けた。
(お前この回しか観てへんやんか、と頭のどこかでつっこみを入れつつ)
そして、終了後twitterにて
「現代版ホームズなんか絶対観ないわ、とほざいていた過去の自分を100回蛸殴りしたい」
と呟いたのであった。
それからの私は文字通り「SHERLOCK」に取り憑かれた。いや、取り憑かれている。現在進行形だ。
映画全般に興味が一切ない自分が「ムービースター」やら「Screen」やらといった映画雑誌を買う(しかも予約してまで)日が来るとは誰が想像しただろうか。いやない。
あまつさえ、その雑誌の企画、「生写真(今時ですぜ!)全員プレゼント」などに嬉々として応募するなどとは誰が想像しただろうか。いや絶対ない。
そのうち透明の下敷きを買って中に切り抜きとか入れる痛いアラフォーになりそうで怖い。
いや今でも十分痛いが。
とまあ、以上「いかにして私は「SHERLOCK」ドラマに嵌まったか」というお話でした。
twitter仲間の皆様におかれましては既読(しかもしつこい)のネタで申し訳ございませんでした。
そうでない皆様におかれましてもくだらない戯言に最後までお付き合いくださり申し訳ございませんでした。
しかしながら、これからも脳内だだ漏れpostしていきますのでうざいでしょうがご高配の程何卒宜しくお願いします。
(宣言)
【追記】
先程上掲駄文を読み返してみて、そもそも「何故」私がドラマ「SHERLOCK」に嵌まったかを書くのを失念していたことに気がついた。
これは看板に偽りありである。
何故私が「SHERLOCK」に嵌まったか。
まず一つ目は、キャストの言動、演技が正典と照らし合わせても実にin-characterなことである。
例えばシャーロックの年格好は正典よりも随分若い設定となっているのだが、彼の描写や行動は、ああ確かに彼の若かりし頃はこんな風であったであろうな、と手練れのシャーロッキアン諸氏をも納得させる要素に満ち溢れているのだ。多分。
具体的にはオリジナルよりもより尊大でより性急、そしてやたらとミスが多い。
つまり彼は「発展途上のconsulting detective」なのだ。
そしてその発展途上ぶりがいかにももどかしいものであるにもかかわらず、見る者に彼は間違いなく後にお馴染みの「ホームズ」に成長するのであろう、という確信を抱かしめるのである。
二つ目は、全編に亘り兎に角びっしりと正典の大ネタ小ネタが散りばめられていることだ。
ドラマ計6本にはそれぞれ一応正典の元ネタが存在するのだが、その他にも微に入り細に入り小ネタがそこかしこに顔を出し、ファンをしてあちこちでにやりと笑わせてくれる。
これらの功績は、原作者のM・ゲイティスとS・モファットが自他共に認める「ホームズおたく」であることに帰せられるべきであろう。
平たくいうと「あんたら、わかってるよねー」なのである。
(無礼千万)
まあこの「SHERLOCK」は或る程度原作を知らなくても楽しめるドラマだとは思うが、これからご覧になる方にはできることなら先ず一通りホームズ譚を読んでみて、とお勧めしたい。
【追記】
先程上掲駄文を読み返してみて、そもそも「何故」私がドラマ「SHERLOCK」に嵌まったかを書くのを失念していたことに気がついた。
これは看板に偽りありである。
何故私が「SHERLOCK」に嵌まったか。
まず一つ目は、キャストの言動、演技が正典と照らし合わせても実にin-characterなことである。
例えばシャーロックの年格好は正典よりも随分若い設定となっているのだが、彼の描写や行動は、ああ確かに彼の若かりし頃はこんな風であったであろうな、と手練れのシャーロッキアン諸氏をも納得させる要素に満ち溢れているのだ。多分。
具体的にはオリジナルよりもより尊大でより性急、そしてやたらとミスが多い。
つまり彼は「発展途上のconsulting detective」なのだ。
そしてその発展途上ぶりがいかにももどかしいものであるにもかかわらず、見る者に彼は間違いなく後にお馴染みの「ホームズ」に成長するのであろう、という確信を抱かしめるのである。
二つ目は、全編に亘り兎に角びっしりと正典の大ネタ小ネタが散りばめられていることだ。
ドラマ計6本にはそれぞれ一応正典の元ネタが存在するのだが、その他にも微に入り細に入り小ネタがそこかしこに顔を出し、ファンをしてあちこちでにやりと笑わせてくれる。
これらの功績は、原作者のM・ゲイティスとS・モファットが自他共に認める「ホームズおたく」であることに帰せられるべきであろう。
平たくいうと「あんたら、わかってるよねー」なのである。
(無礼千万)
まあこの「SHERLOCK」は或る程度原作を知らなくても楽しめるドラマだとは思うが、これからご覧になる方にはできることなら先ず一通りホームズ譚を読んでみて、とお勧めしたい。
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