2015年9月23日水曜日

8/31(月)vol.1 湖水地方のターン・ハウズというちいさな湖を巡ること

【これまでの記事】

0.Road to Lake Districtー湖水地方への道(下調べ・予約編)

1.8/29(土)日本を出立しイギリスの地に足を踏み入れるも、ホテルやバービカンシアター
で波瀾万丈の兆しあること

2.8/30(日)vol.1 ロンドンを出立し湖水地方に向かうこと、そしてまずはグラスミア湖を訪れること

3.8/30(日)vol.2 グラスミア湖からライダル湖を歩くこと、そしてウィンダミア湖畔ボウネスのB&Bに投宿すること

8月31日(月)

歳だろうか、そうそう疲れ果てて眠っても長い時間寝られない体になって久しい
この日も夜9時に寝て朝4時には起きだしていた。
朝ご飯は8時半からとのことなのでうんとこさ時間がある。
取り敢えず、身支度を整えて早朝のお散歩に行くことにした。




ボウネス波止場は、昼間の喧騒が嘘のように静謐に満ちていた。
群れているのは白鳥に鴨ばかり。


8月最後の日とはいえ、やはりこの時間だとかなり冷え込む。
ライトダウンにパーカーで丁度よいくらいであった。

人気のない街並みをふらふらと歩いて帰着す。
早く朝ご飯始まらないかな、とダイニングを覗くも人の気配すらない。

ここまで朝ご飯を待ち望んでいるのは勿論腹ペコだから、ではなく、実はこの日はここから徒歩30分(グーグルマップ調べ、しかも登り坂)のウィンダミア駅発、9時24分のバスに乗る予定だったのである。
しかし朝ご飯は8時半から。
ボウネスからウィンダミア間のバスは丁度良い時間に走ってはおらず、ボウネス波止場を見ても朝っぱらからタクシーがやって来そうな雰囲気はなかった。
うむでは仕方がない、ご飯を食べ次第ダッシュせねばなるまい。

という訳で8時半きっかりにダイニングに入る。
ユニオンジャックのエプロンをつけたおばさんがにこやかに
「おはよう!シリアルたべる?」
と聞いてくださった。
「あ、頂きます」
「じゃあここ座って。湖が見える特等席よ!」



なるほど、確かにかすかに見える。
どちらかというとマフィアのドン席というほうが当たっているような気がしたが。



シリアル(コーンフレーク)とオレンジジュースを平らげてもなかなかメインは出てこない。
ちょっぴり焦りだしたころ、トーストがやってきた。



バターをたっぷり塗ってむんずと頂く。
急いでいたこともあり、立て続けに二枚平らげたらおばさんがあらよく食べるわねえ、と更に三枚追加してくれた。
…むう。わんこそばならぬわんこパンか。
頂いたものは断れないタチなので、更にもしゃもしゃと頂いた。

そうこうしてると、これぞ典型的イングリッシュブレックファスト!という一皿がやってきた。



豆のトマト煮といい、バンガーズ(小麦粉のつなぎたっぷりのもしゃもしゃしたソーセージ)といいベーコンといい目玉焼きといい、申し分ない朝ご飯である。

しかし私は急がなければならない。
味わいつつでも早急に、というペースを守りつつがつがつと食した。
どれも大変美味しかったが、大変に塩辛い。
塩味濃いめを好む私が辛いと感じたので相当だったのではないか。

食べ終わったのは8時50分。
紅茶をぐぐっと飲んでごちそうさまし、荷物を纏め颯爽と宿を出た。

しかしそこからはなかなかの難行苦行であった。
なんせボウネスの街は湖畔にあり、ウィンダミア駅は山とはいわぬが丘のてっぺんにある。
高低差は相当なもので、そこを半分ランニングの速度で競歩するのである。
途中でダウンもパーカーも脱ぎ、うわ朝ご飯出そう(尾籠失礼)となりつつ上着一枚で息を切らせながら道を急いだ。

競歩を続けつつ、ふと時計を見ると9時20分である。
わあ発車5分前ではないか。
まだ坂は続いてはいたが決死のダッシュでラストスパートをかまし、なんとか間に合わせることができた。

バスの前にいたおにいさんに
「あっあっあの、いっいっ一日乗車券ぜえぜえくだはいぜえぜえ」
というと、
「わ、わかった。まあおちつけ」
と言われた。

「…てか一体、どこから走ってきたん?」
「ぼ、ボウネスですぜえぜえ」
「あーそれはお疲れさん。きついよな。ほら乗車券」
「ありがとぜえぜえ」
「はよ乗って座って休み」
「ありがたすぎますぜえぜえ」

疲労困憊でバスの椅子にへたり込む。
こんなところで体力を消耗していて大丈夫だろうか。

程なくして時間となり、バスは発車した。
このバスはコニストン湖への505便である。
本数は1時間に1本と少ない。
(だからこそ遅れると大事だったのだ)
観光用の二階建てバスでもない、至って普通のバスである。

しかし景色は美しかった。
この日の朝は快晴だったので、昨日と同じ場所から見るウィンダミア湖もまるで違って見えた。
これはプチトレッキング、期待できる。



バスは、車が二台すり抜けるのがやっとの細い山道をうねうねと走る。
ぎりぎりすれ違ったり対向車がバックを余儀なくされる状況を眺めながら、いつか湖水地方をドライブするのは夢だけど、ここだけは絶対運転したくないと思った。


車窓より

1時間程で降車したのはコニストンの街の手前のモンクコニストンという場所だ。
辺りは森ばかりで何もない。
「ほんとここでいいの?」
「いいのいいの。ありがとう」

バスを降りて颯爽と?歩き出す。
地図によると、道を渡ったところにブーン・グラッグという農場があり、その脇にパブリック・ブライドルウェイがあるはずだ。

ここで少し薀蓄を。
イギリスの田舎を歩くときに必ずといっていいほど出くわすパブリック・フットパスだが、これは国有地・私有地問わずだれもが歩いてよい公共の歩道のことである。
ではパブリック・ブライドルウェイとは何かというと、上フットパスとおなじ性質の公共の馬道、つまり人に加えて馬も通行してもよい道であるらしい。
ブライドルウェイでは馬に加え自転車も通行可能だが、フットパスでは人、および車いすやベビーカー、リードをつけた犬などしか通行できないそうだ。

さてブライドルウェイである。
おなじみの木戸を開けて(今回はちゃんと開けることができた)いよいよ小さな湖、ターン・ハウズに向けて出発した。



といいたいのだが、なんせ松が鬱蒼と生える昼なお暗い道なので、この方向でよいのかが覚束ない。



幸い、前に犬を連れたおじさんがいたのでターン・ハウズはこっちでいいですか?と聞くといいよいいよーと答えてくれたので安心して進むことができた。

この道、最初は平坦だったがそのうち勾配がきつくなってきた。
足元も石がごろごろする木の根道で、相当馬に慣れた人でないと騎乗で進むのは大変なのではないかと思った。
(まあ本当に馬で通行する人はいまいが)
運動不足の私は我が足でぜえぜえはあはあとひたすらに歩く。

そういえば、件の犬連れのおじさんに会った以後は人っ子一人見ない。
怖くはないが、連休ともなればくまなくあちこちがごった返す極東の島国からやってきた者にとってはなにやら不思議に思えた。
それよりも兎に角足が痛い。
やはり昨日からの歩き詰めが堪えているようだ。



暫くすると左側の視界が開けてきた。
牧草地との境界であろう、石造りの壁づたいに進むこと暫くで森を出た。





再び木戸を開けると、目前にはナショナルトラストマークの看板、そして「ターン・ハウズ」の文字。
おおやっとたどり着いた。


障害者用の駐車場を抜け、整備された小道を更に歩くと…
見えてきた。








気持ち良く晴れていたこともあり、ちょっと息をのむほど素晴らしい眺めだった。
目に染みわたる深く鮮やかな紺碧の水面。
いやあ、これはずるい。
ちょっとずるすぎるよ英国。
何がずるいんだかよく分からないが、余りの風光明媚さ加減に頭をやられた私はずるいよなあ、うんずるい、等と一人ぶつぶつ呟きながら、ひたすら同じような写真を増産し続けるだけの簡単なお仕事に勤しんだのであった。

ここでも湖畔に降りることができたので、またもや湖にご挨拶をする。
湖水は、昨日の2湖よりもきりりと冷えていた。



ひととおり眺め写真を死ぬほど撮り、ふと時計を見るとなかなかよい時間になっている。
名残惜しくはあったが、振り返り振り返りしつつターン・ハウズを後にした。

帰りは行きとは違うルートを採った。
先程までとは打って変わって、視界が開け陽がさんさんと降り注ぐ道である。
そして何より嬉しい下り坂だ。







一部車道ではあるが、車の通りは殆どない。
緑の山や、はるか向こうに雲のように散らばる羊を眺めぐんぐんと下る。






途中、一軒の家に行き当たった。
Tarn Hows Cottageというらしい。
湖水地方ではこの時期、よく紫陽花を見かけた。
ここのものは少々草臥れてはいたが。

ひととおり眺めさあ先に進もう、としたとき、更なる問題にぶちあたった。
この家の前の木戸の鍵がまたもや開かないのだ。



ここです

押しても引いても、上に引いても下に下げても、はたまた右に引いても左に引いても、今までの私のフットパス木戸知識の蓄積(半日のみだが)を駆使しても開かないったら開かないのだ。
ここには誰も助けてくれそうな人はいないしどうしよう。
いっそよじのぼってやろうか、とまで思い詰めて?いたところ、やれ嬉しや前からご夫婦連れがやってきた。
やおら、鍵を大袈裟にがちゃがちゃやってぼかあ困ってるんですアピールを繰り出す小狡い日本人と化す。

「あらあら大丈夫?」
「開けられないんです~ううっ」
「大丈夫、開けてあげるよ」
でもこのご夫婦もかなり手こずっておられたので、必ずしも開けられなかったのは私の不器用のせいばかりではないと思う。

苦闘のすえ開けてくださったご夫婦に御礼を言い、やおらまた1人歩きはじめた。
Yewdale Beckという小川沿いの気持ちの良い細道をずんずん進む。







(因みに、小川をBeckというのは北イングランドの方言?らしい。
ドイツ語のBachと関係あるのかしらん)

川と別れると、広々とした放牧地に入った。




羊たちが寄ってきて物珍しそうに眺めるのでお返しに激写して差し上げる。





お前は何者ぞ


牛さんも沢山いた

気持ちの良い明るい牧場の一本道をずんずん歩き、ふと見ると朝にバスを降りたブーン・グラッグ農場の建物が見えた。
正面からは分からなかったが、綺麗にお花が植わっている。





おお、もうここまで来たか。
ここから再びバスに乗って終点のコニストンまで行こうと思っていたが、何せ1時間に1本のバスなのでタイミングが合わず、えーいもう歩いてしまえとそのまま歩みを進めた。






コニストンまでのフットパスの左側は車道で若干走行音が気になるが、右側には牧場が広がっているのでこれまた歩いて楽しい散歩道である。

20分ほどで街、いや村の中心部に到着す。
ボウネスなどに比べると鄙びてのんびりした雰囲気である。



まずは有料のトイレをお借りして(40ペンスだったかな)、そしてスーパーに飛び込み怪しいオレンジ味?のスポーツドリンクをゲットする。



こんなの(SPARオリジナルだそうな)

・塩辛い朝ごはん
・バスに乗るためのダッシュ(汗だく)
・3時間のトレッキング(汗だく)
・トイレ行きたくないから水分補給最小限
という要素が重なり、兎に角喉がからっからのからだったのだ。
日本でこの時期だと熱中症間違いなしである。
おかげで怪しいオレンジ味も甘露と思えた。んまい。
(ちょっと昔懐かしいバヤリースに似てた)

文字通りの水入りで元気を取り戻したあとは、いよいよコニストン湖畔へと向かう。

つづきます

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