2015年3月3日火曜日

ニューオリンズ行顛末記(一日目:まずは日本を出…られないこと)

某月某日土曜日のこと。
私は伊丹空港にいた。
用向きはアメリカはニューオリンズへの出張である。

海外出張なんて羨ましい、と思う向きもあるだろうが、正直この日が来るのは非常に気鬱であった。
出張の内容は、仕事に関係…なくもない分野のカンファレンスへの参加である。
ぶっちゃけ日本語ででも分からない内容を分からない英語で聴きにいくという不安もさることながら、出張後この成果をレポートし発表会まで開かねばならないという重荷を背負わされている、ということがこの気鬱に拍車をかけていた。

出張の相方嬢(以後H嬢とする)との待ち合わせの時間より30分も早く着いたので、取り敢えずドルを交換しにいった。
伊丹は基本国内空港なので、外貨交換所は本屋のレジが兼ねていた。
しかも取り扱いが100ドルパック(USD20×3枚、USD10×3枚、USD1×10枚)のみである。
一応500ドルほど替えておいたが、1ドル札が50枚というのには正直参った。
おかけで財布はぱんぱんである。
当地に着いたらせっせと1ドル札を消費せねばならない。

それでもまだ時間があったので売店を覗く。
大好きな伊丹のゆるキャラ「そらやん」グッズがあったので、旅前にもかかわらず速攻で手に入れた。



ストラップは早速ICレコーダーにつけた。
リアタイでは無理でも、どうか難解な英語の講義、聴き取れますように。

そうこうしているうちに時間になりH嬢と合流す。
国際線乗り継ぎ開始時刻までには間があったので、2人で日本最後の昼食を食べに行った。
食べながらも会話は重く途切れがちである。
私より英語ができるH嬢も、今回の出張は気が進まないらしい。

実は、この出張にはもう1人、英語堪能女子が参加するはずだった。
私達は彼女に多大な期待を寄せていたのだが(いかんのだが)、なんと彼女は不幸な事に出発一週間前に病気が発覚し入院するという憂き目に遭ったのであった。
旅行中に発症しなくてよかったよね、とほっとしつつも、この事実は私達出発組2人に暗い影を落としていた。

「…どうなりますかね」
「…まあ、死にはしないよ」

等と余り愉快でない言葉を交わしつつ、ずずっと蕎麦を啜った。


味はあんまり覚えていない

そうこうしているとチェックインの時間となったので窓口へ。
この日は春節ウィークの週末だったので、兎に角中国(か台湾か)の乗客が多かった。
そして皆、判を捺したように電化製品の段ボールを抱えている。
それも業者の仕入れか?というほど大量だ。
皆が必ず持っているのは、噂通り炊飯器である。
中国と日本の電圧は違う筈なので変圧器でもかませるんだろうか。

チェックインも搭乗もスムーズに済み、ANA便で一路成田へと向かう。
乗客の殆どが件の春節中国人客で占められており、一瞬中国行の便と間違えたかのような錯覚を覚えた。

1時間強で成田着。
出国手続きも、人こそ多かったが勿論スムーズなものである。
ゲートに着くと、搭乗予定のユナイテッド6便・ヒューストン行きが見えた。
今回はヒューストンで乗り継ぎ、ニューオリンズへ行く旅程なのである。




当分飲めぬであろうお茶を買って待っていると搭乗が開始された。
確保しておいた通路側の座席に坐り、先ずは映画のラインナップをチェックする。
ふむふむ、見損ねていた「六才のボクが、大人になるまで。(Boyfood)」があるな。
まずはこれを見よう。
そのあとはカンファレンスのハンドアウトの解読(そう、「解読」である)に勤しまねば。

でもまずは映画を、と見始めたのだが、30分経ってもいっかな飛行機は動かない。
乗り継ぎには3時間半を見ているので大丈夫かな、とも思ったがやはり不安である。
暫くするとアナウンスが入った。

「出発が遅れましてご迷惑をお掛けしております。
只今不具合が見つかり、部品が必要なので本社に問い合わせています。
状況が判明次第ご連絡申し上げます」

私の記憶が確かであれば、ユナイテッドの本社はアメリカの筈である。
よしんば部品とやらが見つかったところで、本社から取り寄せてたのでは間に合わぬのでは?

不安はいや増したが、とはいってもどうにもすることはできないので所在なく引き続き映画を見ていると、再びアナウンスが入った。

「只今鋭意努力中ですが、時間がかかりそうなので降りたい方は一旦降りて下さい」

あー、これあかんやつだな。
半ば覚悟しつつ、離れた席にすわっていたH嬢と目配せをして飛行機を降りた。

どうすっかねえ、でもどうにもならないねえなどと不毛な会話をしつつロビーで待っていると、英語のアナウンスが入った。
どうやらマクドナルドで件の便のチケットを見せるとセット(でもなんでも)を引き替えることが出来るらしい。
この事態では今後いつ食事ができるかも分からないので、お腹が減っていた訳ではないがとりあえず赴くことにした。
(ただ腹ただしいのは、このアナウンスが英語「のみ」で行われたことである。日本発便で一応重要なアナウンスを日本語でやらないというのはどういう了見なんだろうか)


マクドに群がる人々(主に外人諸氏)

この時点で既に3時間以上は経過していた。
マクドナルドのセットを抱え、ふとボーディングボードを見ると、UA6便の箇所に赤々と「Cancelled」の文字が踊っていた。
うん。
欠航自体は全く驚かぬ事態ではある。
しかしだ。

何故これをアナウンスしない?

先程から
「あと1時間で出発予定です」
「(その時間が過ぎたのち)あと1時間で(以下同文)」
と出る出る詐欺のアナウンスはひっきりなしに聞こえていたのだが、大事な欠航連絡をオミットしたというのは一体何の意図であろうか。
(意図などないということはよく分かった上での修辞的疑問です念のため)

慌ててゲートに戻ると、カウンターには長蛇の列が出来ていた。
H嬢と交代で並び、順番を待つ。
その間もマイクを使わぬ(ここ太文字で)細々としたアナウンスが飛び交った。

「今夜のホテルは成田、東京とも満員でお取りすることができません」
「明日の飛行機は○時発、UA○便です」(よく聴き取れず)
「補償金として150ドルを限度にお支払いします。但し領収書をご用意ください。申請用紙は配ります」

まずい。
特に一番最初がまずい。
この日は先述の通り春節アフター週末であり、しかも翌日には東京マラソンを控えていたという謂わば最悪の土曜であったので、宿がとれぬというのもむべなるかなと思われた。

しかし理解できるからといって、仕方がないから路頭に迷ってもいいよ♪と納得できるものではない。
必死にスマホを駆使して、なんとか三田(三田!)のホテルを確保した。
しかし部屋はセミダブルしかないという。
幸い、私もH嬢もちっちゃいものクラブ(二人して150cmないのだ)なので、そこはなんとかなるだろう。

なんとかならないのはこの長蛇の列である。
既に時間は午後10時を回っている。
(因みに出発は5時前の予定であった)
これほどの事態なのに、対応に当たるスタッフは3〜4名。
しかもしょっちゅうどこかに消えて、実際に常時対応しているのは2名ほどしかいない。
このままでは東京への終電を捕まえるのも覚束ない。

業を煮やして、外れにいた野良スタッフ氏(失礼)をとっつかまえ状況を聞く。
・今、一度出国手続きを済ませた日本人を外に出してよいものか確認していたが、確認がとれたので出てよい
(ならばとっととその旨アナウンスしろ!)
・ホテルはとれないごめんなさい
・預け荷物は出たところのターンテーブルにある
・接続便その他は明日ユナイテッドのカウンターへお越しになってご相談ください

ここまでを確認したので、後日経費請求用の申請用紙をひっつかみ、H嬢と共に成田を脱出した。
三田に着いたのは日付が変わる頃であった。
とりあえずコンビニに行き、やけ酒と朝ご飯を買い込んだ後ホテルへ。
2人で酒を吞みつつ呆然とこれからどうなるんだろうねえ、と語りつつ、この日は終了した。


このエビスも経費として請求していいですかユナイテッド

(つづく)

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