2013年8月17日土曜日

露庵 菊乃井 木屋町店

えー、沖縄話が続いておりますが、本日はちとカットインして旨いもの話をさせて頂きます。

昨日、8月16日は不肖私の誕生日であった。
毎年まあようもこんなくそ暑い時期に生を受けたものだと何かと感慨深いのであるが、桁外れの猛暑に襲われている今年、その感慨は特に深いものがあった。

とまれ、この歳になると別に誕生日プレゼントなど要らない(欲しいものは自分で買うし)、それより何より美味しいものを食べさせておくれ。
と母にリクエストして連れて行って貰ったのは「あの」菊乃井のカジュアルダウン&スピンオフ店(…なんですよね?)露庵 菊乃井であった。



開店の11時半より少し前に到着したので、意味も無く店の前の高瀬川やら萎れかけの芙蓉の花等を撮影して時間を潰す。
さすれば暖簾が上がったので、いかにも今来ましたよ顔で(どこへの見栄やら)入店した。


今回は10,500円のコースを頂いた。


先ずは冷酒に紫蘇をつけこんだ紫蘇酒を頂く。
喉ごし爽やかで、暑い日にぴったりのおもてなしだ。
(写真は飲み干した後の杯です。実際は勿論なみなみと注がれておりましたよ)


大きな青い無花果に、ほんの少し酸味を利かせた白味噌をとろりかけた一皿。
まったりとした、しかし厭味では無い白味噌の甘みと無花果の果実味が大変しっくりくる。


大きな緑の葉っぱに酸漿5つ。
すわこの実をたべるのか、と思いきやそうではなく(当たり前です)中にそれぞれ違ったちいさなご馳走が隠されているのである。


鱧の篠田巻(風)。


山桃の葛寄せ。


鱧の卵のゼリー寄せ。


ささげの胡麻よごし。


蕪の鱧巻き。
(下には大根?の膾のようなものが敷いてあった)

皿を一瞥したときに視覚に訴えかける葉の緑と酸漿の赤のコントラスト。
そして中にどんなご馳走が入っているんだろう、とそれらをひとつひとつ開けるときのわくわく感。
流石は手練れの演出であると思う。
「この趣向、先代が考案したんですわ」
と板長さん的な年輩の男性が説明なさっていた。


刺身。
魚は鯛と太刀魚である。
茶色いものは太刀魚の上に乗せられたポン酢のジュレ。
そして彩りで黄ニラと水ナスが添えられる。

魚の鮮度、質は言わずもがな申し分ない。
特に太刀魚ーポン酢ー黄ニラの味の取り合わせが峻烈、且つ滋味深かった。

ここで板前さんが大きな木製の盥を持って登場した。
見ると大きなアマゴが二匹、びっちびちと撥ねている。
(写真撮らせて貰えばよかったな)
これを焼き物に使わせて頂きます、と板前さんは一礼して厨房に戻っていった。
否応がなしに期待は高まる。


ご存じ、鱧の湯引き。
あわあわとして清冽な畿内の夏の味覚の王様である。
添えられた梅肉も主張しすぎず控えめで、鱧の引き立て役にぴったりであった。

ここで堪らず合いの手の酒を日本酒にチェンジ。
先だって「じき 宮ざわ」で嗜んで気に入った「鄙願」があり心惹かれるも、折角なのでここのオリジナル「菊乃井」の大吟醸を頂くことにした。

ちょい余談だが、日本酒のメニューで鄙願の名を見たとき、
…あれ?
そういえばこの前の宮ざわさんで頂いたとき、鄙願は全国でもウチしか出してないんですよとかいう話を伺ったんだけどな?
と暫し首を傾げたことであった。
…まあ、いいけど。


すわ賀茂茄子まるごと登場か?
と思わさしめるユニークな器。
見ての通り、蓋は本物の賀茂茄子をあしらっている。


此方は本物の賀茂茄子。
蓋を作るときには、ヘタを下にして器に突っ込み、器の口に合わせてばっさりと切るのだという。
しかしこの器、質感といい色といい本当に茄子を上手く再現してある。
「この料理のために誂えたんですわ」
と板長さんらしき方は得意気に仰っていた。


そして「茄子」の中身はこれ。
賀茂茄子の身、万願寺とうがらし、海老を揚げ煮浸しにしたものがぎっしりと詰まっている。
素材も勿論だが、お出汁の味が濃すぎず薄すぎず絶妙の塩梅である。
添えられていた小さじできれいさっぱり頂いた。


さて待望の焼き物がやってきた。


先程飛び跳ねていたアマゴ先生である。
蓼酢でさっぱりと頂く。
この大きさにも拘わらず、頭も骨もそのままがぶりといけてしまう柔らかさであった。
同じサイズの鮎ではこうはいかないけれど、アマゴは身が柔らかいので丸ごと食べることができるらしい。

齧りつくと、青臭い胡瓜にも似た爽やかな香りがぷんと漂った。
早朝の渓流に漂う匂い、なんていったらポエマーに過ぎるだろうか。
でも本当にその情景を彷彿とさせる香りであった。
(山奥のせせらぎって青臭い香りしませんか?)


鱧の柳川風。
この料理には玉葱が使われる場合が多いのだが、これには茄子が使われていた。
玉葱もよい旨味が出るものだが、此方の方が鱧の身の淡泊な味わいをよりダイレクトに味わうことができるように感じた。
そしてベースのお出汁がやはり素晴らしい。


〆のごはんは鮎ごはん。
炊きあがって蒸らしたところをお釜ごと見せて頂いた。


身を解してよそって頂く。
山椒がぴりりと効いて、お腹いっぱいの筈なのについついおかわりをしてしまう。


汁物はお澄ましでも味噌汁でもなく、この真っ赤なスープであった。
ベースは赤い万願寺とうがらし。
とうがらしで出汁を取り、更にすりおろして解き加えるという手間のかかったものである。
鰹出汁がベースなので、ごはんにも勿論合う。

ひとつだけ残念だなと思ったのは、よそわれたお椀が朱塗りであったことだ。
赤に赤では色彩の楽しみが半減されてしまう。
これが白い磁器の器で供されていたら、さぞかし目に鮮やかだったろうと思う。


スープの主人公、赤満願寺とうがらし。
こんなに肉厚なのは初めて見た。


お腹はもうはち切れる寸前だが、デザートは別腹…
…ではない。
酒飲みのご多分に漏れず、私も甘い物は若干苦手である。
ましてや食後のデザート等というのは正直拷問に等しい。
なので、この日もデザートは遠慮しておこうかと思ったのだが、これを見てああなんとか食べられそうだとほっとした。
上は黒糖のアイスクリーム黒蜜添え、下は黒胡麻の葛まんじゅうである。
両方ともするするとお腹に収まったので、やはり菊乃井はすごいと思う
(感心するポイントが何か違う気もするが)

以上、菊乃井ランチでした。
正直ビッグネームだし適当なコースなんじゃない?と思っていたが、どうしてどうして見事なものであった。
この内容でランチ1万円なら十分お値打ちだと思う。
瑕瑾があるとすれば、若干食材のバラエティに欠けていたということ位であろうか。
とはいえ、盛夏にそれについてもの申すのは酷ではあるが…
今度は食材のピーク、秋に再訪してみたいと思う。


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