まず。
E1「空の霊柩車」を見て意表をつかれたのはコミカルな、余りにもコミカルな展開ぶりであった。
どうも私はライヘン以後の所謂ANGSTな二次創作(FanFiction)を読み過ぎたらしく、ジョンは軍人らしくぶち切れるものの、その後はドラマティックでお涙頂戴的な流れになる、というのを無意識に期待しすぎていたらしい。
要は、死を偽っていたSを許すことが出来ないJ/どうして?僕がああやったのは君の安全を守るためだったのに、生きていることを知らせなかったのも君のためだったのにと苦悩するS、みたいな展開を想定していたのだ。
しかしJは最初こそぶち切れてSを3度も違った技?でぼこぼこにするも、火あぶりにされかけた時に助けて貰ったことで(多少のもやもやは残っているようだが)あっさり許してしまう。
また、Sの死の偽装がJのためであった、という感動的なストーリーも、ライヘンのトリックが明らかにされることにより立ち消えた。
(Sがアンダーソンに語ったネタバレによると、Jを狙っていたスナイパーはマイクロフトの手下により始末されていた。これが可能だったのであれば、「Jを救うため」という目的からするとそもそもあのような大がかりな「ラザロ計画」は不要だった筈だ)
でもって、生存をJに知らせなかったのはただ単に僕が生きてることが君を通じて世間にバレたら困るからだ!と当の本人が暴露している。
(そしてJが俺のせいかよ!とキレている)
つまり、E1に於いては、私、またファンの大多数が勝手に想定していたANGSTな要素は悉く潰され、ラストシーンではごく自然にSとJのコンビが復活していた
(勿論メアリーの存在は除く)
今になって思うに、そもそもE1はS3E2の余りな幕切れに心を痛めていたファン達(そして余りにも待たされたファン達!)へのおかしみたっぷりのサービス回ではなかったろうか。
という訳で、S3の幕開けにおいても安定のサイコパスじゃなかったソシオパスぶりを遺憾なく発揮したSであるが、さすればE2「三の兆候」において何故いきなり殊勝に「ジョンは僕を救った」等と言い出したのだろうか。
そういえばS1E1でSはJに命を救われてはいるが、どうもSはそのことを念頭に置いているのではないらしい。
さてSは、自分はJによって何から救われたと認識してるのか?
ここでE1に立ち返って考えてみる。
「私は孤独でない」という兄に、Sは上から目線とでも言いたくなる優越感を漂わせつつ「なんでお前にそれが分かる?」と問いかける。
つまりSには、自分は孤独というものを理解しているという自負があるのであろう。
本当に分かっているかは兎も角、ライヘン以後の日々はSが孤独を理解したと認識するに足るほどにハードだったのかもしれない。
そしてE2「三の兆候」。
Jに君はBest Friendだと言われた際、Sはそこまで固まるかお前、という位に固まる。
初めて知った(と本人が理解している)孤独ののち、最高の友達と呼んでくれる友がいたことはこの自称ソシオパスにも深い感銘を与えたらしい。
(個人的には彼は決してソシオパスではないと思っているが、それはさておく)
彼のスピーチは多少の「落とし」はあるものの真っ当にすこぶる感動的だし、ショルト少佐が死ぬ覚悟で部屋に立てこもった際、Sに
「君と私は似ている。君も同じ事をするだろう?」
と問いかけた際にも
「あなたも私もジョンの結婚式に決してそんなことはしない!」
と、至極真っ当な「人間らしい」返答をしている。
E2は勿論Jとメアリーの結婚式、そしてそこで起こる事件がメインではあるが、SがJの暖かい友情で孤独から「救われ」、以て血の通った普通の人間に近づくという過程も僅かではあるが描かれていると思う。
(因みに、私は本シリーズではこの「三の兆候」がいちばん好きである)
ところが続くE3「最後の誓い」ではJは彼を一切「救わない」。
Sがメアリーに撃たれたのちマインドパレスは彼自身のレスキューの場と化し、様々な登場人物が入れ替わり立ち替わり現れ助言を行うが、そこには肝心のJの姿形もない。
そしてこの場で決定的に彼を救うのは往年の敵、モリアーティである。
ラストシーンでも、彼が突然出現したおかげでSは英国、ひいてはJの元を永遠に去りかけていたところをすんでのところで「救われる」。
この肝心要のシーンではJは無力であるし、それ以上にSに対し必要以上に冷淡であるように見える。
これは何故だろう、と考えた結果は既に此方に書いた。
つまり皮肉にも、JはSを「救った」結果Sがヒューマナイズされ、そのことがJがSを遠ざけることとなったのではないかと愚考している次第である。
更にはJはメアリーという新たなサイコパスを手に入れた。
(現にメアリーはラストシーンでSに「彼がいつもトラブルに巻き込まれておくようにしておくわね」と約束している)
かくして、SとJの「古き良き日々」は終わりを告げたのである。
勿論、2人の関係は本作品の骨幹であるからしてS4でも連綿と続いていくのであろうが、それは必然的に今までのシリーズで描かれてきたのとは全く別のものになろう。
あのまま飛行機が飛び去っていったら、その結末は前回のライヘンほど派手ではないものの前回と同じほど、いやそれ以上に酷いクリフハンガーであっただろう。
だが、上記の通りSは親愛なるモリアーティのお陰で目出度く4分後(!)に帰還を遂げた。
モリアーティの復活も相俟り、色々言いたいことはあるが取り敢えず欣快に堪えぬとしておく。
だが、戻ってきたところでSには居場所はあるのだろうか。
一度「救われた」が故に、却ってより深い孤独を味わう羽目になるのではないか。
かように地味な不安を感じさせるあたり、やはりこの結末も大概なクリフハンガーであったと言わざるを得ない。
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