2014年6月12日木曜日

シャーロック/SherlockS3E3「最後の誓い」についての感想、らしきもの

S3E3「最後の誓い」をはじめて観たとき、なんだこれハッピーエンドじゃん、と思った。
本作はさんざこれまでで一番酷いクリフハンガーだと聞かされており、あの「ライヘンバッハ」より恐ろしい幕切れとは如何に、と震えていたので、飛行機がとんぼ返りしたシーンではあれれ?と拍子抜けしつつもほっとしたものであった。

しかし視聴を重ねるにつれ、やはりこれはものすごいクリフハンガーだったのかもしれないと思えてきた。
あの結末は2人の関係を(ジョンの結婚以上に)根本的に変えてしまうものだったのではないだろうか。

S2E2「ライヘンバッハ…」の幕切れは確かにセンセーショナルだったが、視聴者にとってシャーロックが生きて戻ってくることは明白であった。
飛び降りというスタイルがいかに (視覚的に)ショッキングでも、彼の帰還はまずもって大前提で、問題はどのように戻ってくるのか、そしてジョンはそれをどうやって受け入れるのかに絞られていた。

しかし、今回はその後の展開が読めない。
モリアーティの復活(らしきもの?)は確約されているが、ジョンとの関係はどうなるのか?
何よりE3のラストでジョンがあっさりThe Game is over.と言い放ってたことが気になった。
そして、彼は君とはもう会うこともないというシャーロックの言葉を否定もしない。
仮にSが再びロンドンで活躍するとしても、その傍らにいるという意思は既にJにはないのかもしれない。

S1E1「ピンク色の研究」でJはSを守るため殺人を犯し、S3E3でSはMary、ひいてはJを守るため殺人を犯すというのは非常に分かり易い物語の回収方法である。
しかしその結末に至る経緯は全く異なる。
これまで関係を築き上げてきた友人のために犠牲となるというのは或る意味至極真っ当だ(Sらしくもなく)
翻って考えると、会って間もない人間のために殺人を犯す「常識人」Jの特異性、異常性が改めて浮かび上がってくる。

Mもまたサイコパス(この言葉は適切ではないと思うが)だと判明したとき、Jは「こんな奴ばっか集まってくるのは俺のせいかよ!」(意訳)と怒鳴るが、はいあなたのせいです。
彼の、「偉大なる常識人」の表層から透けて見えるアブノーマルな諸事への欲望が、謂わば誘蛾灯のようにサイコパス共をおびき寄せるのである。

だから、ラストシーンにJがSに対して見せた「冷たさ」は、ひょっとしたらSが友人のために殺人を犯す、という「ノーマル」な行動に出たことに対し無意識に失望した故ではないかと思ったりもする。
(無論、意識のレヴェルでは彼に非常に感謝しているのだが)
Sはかようにどんどん「人間化」していくが、Jはそれは意識上で歓迎しつつ無意識レヴェルでは魅力を感じなくなっているのではあるまいか。

更に、JはMを得たことによりサイコパス成分(なんじゃそれ)の需要が満たされ、ヒューマナイズされたSはお払い箱になったのではないか、などという悲しい想像も浮かぶ。

S2は物理的な別離で幕切れとなったが、S3の幕切れは2人の心の絆(口幅ったいが)の断絶を示唆しているような気がする。

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